+Small Happiness+





カーテンから差し込む日差しが眩しくてデュオは目が覚めた。

本当なら今日は久しぶりのオフと言う事もあってゆっくり眠りたかった。

けど一度覚めてしまった身体はデュオの意識を裏切って覚醒に向かって行く。

仕方がなくデュオはベッドから起きて部屋を出た。

時計を見るともう昼過ぎだ。

テーブルの上にはラップの掛かったブレックファストが置かれていた。

(アイツいないのか?)

デュオはまだ眠い頭で少し考えてヒイロの部屋の扉を開ける。

部屋の主はすでにそこにはおらず、綺麗に整頓された空間があるだけだった。

「出掛けたのか?」

デュオは扉を閉めて顔を洗いに行く。

それから作ってあった朝食を食べて皿を洗った。

テレビを点けるが大して興味を引く番組はやっていなかった。

(どうすっかなー)

普段は任務で動き回り、オフと言えば夕方まで惰眠を貪っているデュオ。

こういう時にやりたい事が思いつかない。

窓から外を見渡せばそこには一面のブルー。

雲一つない青空。

少し考えてデュオは長い間していなかった自分の部屋の掃除をする事に決めた。

そうとなると行動は早い。

まずはいらない物を袋に纏めて行く。

その後は掃除機と雑巾掛け。

配置も少しだけずらし使いやすい様になった。

「よし、完璧!」

時計を見るとさほど時間は経っていない。

デュオはまた少し考えて今度は洗濯をする事に決めた。

ベッドのシーツを洗濯機に流し込む。

それだけでは足りないのでデュオの私服も放り込む。

(まだ足りないよな)

そう言いながら辺りを見回すとイスに掛けてあるヒイロのシャツとジーパンに目が行った。

(コレも洗っちゃえ)

漸く洗濯機が動き出す。

「今日はいい天気だし、布団でも干しますか。」

洗濯機が回っている間やる事がないデュオは布団を干し始める。

掃除や洗濯と言うものは一度始めだすと気になるものだ。

デュオはキッチンや風呂、洗面所などを次々に磨いて行く。

「ふぅーこんなもんかな。」

気づけば結構な時間が経っていた。

「あっ、洗濯物!」

先ほど回した洗濯物をカゴの移しベランダに行こうとした時、玄関の扉が開く音がした。

ヒイロが扉を開けて中に入ってくる。

「よっ、おかえり。」

「ああ、……起きていたのか。」

「まぁな、それよりキレイになったと思わねぇ?」

子供が親のいない間に部屋をキレイにして驚かす……そんな表情をするデュオ。

そんな表情にヒイロは自然に顔の筋肉が緩むのがわかる。

辺りを見渡せば確かに色んな所が整頓されていて綺麗になっている。

無言で頷くヒイロに素直に喜ぶデュオ。

「で、どこ行ってたんだ?」

「夕飯の買い物だ。」

「作ってくれるのか!」

デュオの顔が明るくなる。

ヒイロも久しぶりのオフである。

本当ならずっと家にいて読書をしたり、溜まっている書類整理をしようと思っていた。

しかしデュオとオフが重なりそういう考えは消えて行った。

朝は起きてこないだろうからとさっさと書類整理を簡単に済ませ夕飯の買出しに出た。

夕方前には起きるだろうと予測をつけていたヒイロだった。

帰って来てみれば、デュオは起きているし部屋も綺麗になっている。

デュオもヒイロと一緒にオフを過ごしたいから早起きした……。

と言う訳ではないだろうが、ヒイロはそれでも帰ってきてデュオが起きている事が嬉しかった。

デュオはデュオで朝起きてヒイロがいない事に少し寂しさを感じていた。

もしかしたらヒイロと少しでも一緒に過ごしたくて早く目が覚めたのかもしれない。

今日に限って部屋の掃除や片づけをしてしまったのもヒイロとゆっくり過ごしたかったから……。

「ちょっと待っててくれよ。コレ干したら手伝うからさ。」

そう言って洗濯物が入ったカゴを持ってベランダに歩いていくデュオ。

そのカゴを半分持ってヒイロも一緒に歩き出す。

ヒイロの目が一緒の方が早いだろうと語っている様に感じてデュオは少し照れくさそうにはにかんだ。

ヒイロが洗濯物を渡し、デュオが干す。

その動作を繰り返している時、ゴトっと音がして何かが落ちた。

「あっ。」

それはヒイロの携帯電話だった。

ヒイロが拾って中を確認する。

「どうだ?」

「駄目だな。」

「ゴメンヒイロ!オレちゃんと中確認してなかった。」

デュオが本当に申し訳なさそうに手を合わせて謝っている。

「別に気にしてない。」

「けど……。」

「いいと言ってる。」

ヒイロは別段困った様子はない。

買い物に行くにも持っていかないほどヒイロには携帯電話は必要ないものだった。

「弁償する!」

デュオがいきなり大声で叫んだ。

「弁償するから。今から買いに行こうぜ!」

「今からか?」

「……そうだよな、お前今帰って来たとこだもんな。……よし!オレ一人で行って来るから。」

デュオは一人で話を進めて納得している。

「どんな携帯がいい?」

どんなと聞かれてヒイロは初め何でもいいと答えようとしたが、少し考えてこう答えた。

「お前と同じ物がいい。」

「俺と?」

ヒイロは頷いてデュオを見る。

「同じかー。んー。」

腕を組んで考え込んでいるデュオにヒイロは問いかける。

「嫌なのか?」

「ちがっ、そうじゃなくて。オレのって結構前のヤツだからさー、もう同じのないんじゃないかと思ってさ。」

「そうか……。」

ヒイロは少し考えてデュオに手を差し出しながら言った。

「お前の携帯は?」

「俺の?」

早く出せと言わんばかりに手を出してくるヒイロを少し訝しげに思いながらも

デュオを大人しくポケットから携帯を取り出しヒイロに手渡した。

受け取った携帯を開いて少し見た後、ヒイロは徐にその携帯を両手で真っ二つに折った。

「ちょっ!ヒイロ!何すんだよ!」

流石のデュオもまさかヒイロが携帯を壊すとは思っていなかった。

「これでお相子だろ。」

ヒイロがニヤリと笑ってデュオを見る。

「心配するな。お前のは俺が弁償してやる。」

何とも偉そうなセリフを悪びれる様子もなく言ってのける。

「……そりゃどうもありがとさん。」

かなり投げ遣りな態度で返事を返すデュオ。

でもデュオは少し嬉しかった。

(ヒイロって可愛いとこあるよなー)

そんなに自分と同じ物が持ちたかったのかとデュオは勝手に解釈していた。

一緒に住んでいても自分の物は自分で買う二人。

普段物欲などない二人は日用品にもそれほど気を使っていなかった。

なのでお揃いのものなんて全くないと言っていい。

またお互い趣味も趣向も正反対と言っていいほどである。

意識してかまたは無意識なのかはわからないが、そんな事を言ったヒイロをデュオは愛しく思った。

「じゃあコレ干したら行きますか。」

「ああ。」

そうしてさっさと洗濯物を干した二人は、仲良く携帯電話を買いに出掛けたのでした。

その日の晩。

テーブルの上には白と黒の色違いの携帯が仲良く寄り添っていた。















後日。

仕事から帰って来たヒイロが開口一番言った。

「最近の携帯にはストラップをつけるらしい。」

「それがどうかしたのか?」

「やる。」

デュオはヒイロからストラップを受け取りじっとそれを見つめて硬直した。

「……マジで勘弁してくれよ。」

そのストラップにはデュオとヒイロのイニシャルが刻み込まれていた。

イニシャルの間にはハートマークらしき物が見える。

「お前のにもちゃんと付けといてやる。」

嬉しそうに自分とデュオの携帯にストラップを付けるヒイロに、デュオは返す言葉が思いつかなかった。

そんな些細な幸せを噛み締めているヒイロを仕方ないなと思う辺りデュオもヒイロに弱いのだ。

その日からヒイロはいつでも携帯電話を持ち歩くようになったとかならないとか……。











あとがき
久しぶりに更新しました。が、何とも微妙で申し訳ないです(>_<)
ヒイロさんがデュオとお揃いの物を持ちたいな〜とか思ったら可愛いだろうな〜と
思ったのがいけなかったのかしら(笑)
普段執着を見せない相手がそんな可愛い我が儘言ったら可愛いですよね!←誰に聞いてる?
しかも念願叶って喜んでたりすると更に可愛いんじゃないかと……(^-^;)
でもそこはヒイロさん、ちょっと他の人より突拍子もない事するんですよ(笑)
それも仕方ないと思うヒイロに弱いデュオとか。ちょっぴり自分の中で萌えでした。

2007.01.31     葵